キプロス

経済見通しは救済時より一段と厳しくなっている。

キプロスの首都ニコシアでは、提案された救済策が保険対象の預金者にも損失を及ぼす恐れがあった3月に抗議行動が繰り広げられ、垂れ幕が掲げられたが、その後は妙に静まり返っている(そして妙に雨が多い)。ニコシア市内や周辺のレストランの中には、賑わっている店もあるが、それ以外は人けがない。だが、見かけ上の正常さの裏側では、放棄された最初の救済案と、最終的な救済策の厳しい条件の衝撃が大きな打撃を与えつつある。銀行口座へのアクセスは今も制限されており、資本規制が続いているため、キプロス人はお金を使わずため込んでいる。企業間信用は枯渇し、これが企業活動の息の根を止めている。

救済策の前提を脅かす著しい景気悪化

 3月の新車販売台数は前年比で59%減少した。避寒客は危機に見舞われた国を敬遠しがちだ。第1四半期は観光客の数が前年同期比10%減少した。しかも、これはまだ始まったばかりだ。既に景気後退局面にあるキプロス経済――昨年は国内総生産(GDP)が2.4%減少した――は、まさに急降下に入ろうとしており、救済策の基になっている前提が崩れつつある。資本規制が長引けば長引くほど、ダメージは大きくなる。危機以前は、企業向けサービスと金融サービスのGDPに対する寄与度が同程度だった(前者が7.4%、後者が9.2%)。何が起ころうとも、銀行は劇的に規模を縮小しなければならない。だが、キプロスはまだ、能力のある労働力が法律業務や会計監査業務を提供することで、地中海東岸のビジネス拠点としての魅力を保てるかもしれない。ただし、資本規制が定着すれば、こうした望みは打ち砕かれるだろう、とヨーロッパ大学キプロスの経済学者アレクサンダー・アポストリデス氏は言う。中央銀行は既に、一部の国内銀行規制を緩和している。現金の引き出し上限は1日当たり300ユーロ(390ドル)のままだが、自動振替や自動引き落としの利用は再開された。資金の電信振替はまだ停止されている。それよりはるかに重要なのは、今なお厳しい対外規制だ。例えば、キプロス人は国から出る時、2000ユーロを超える現金を持ち出せない。

こうした規制を解除できるのは、危機の中心にある銀行が再編された時だけだ。銀行再編は、信頼感を回復し、資金が自由に動けるようになった時に資金逃避を回避するために非常に重要だ。再編の狙いは、キプロス第2位の大手銀行、ライキ銀行を葬り去り、最大手のキプロス銀行(BoC)を復活させることだ。だが、そのプロセスは複雑で、遅れが生じやすい。3月25日に最終的な救済策が公表された時、ライキは「グッドバンク」と「バッドバンク」に分割されることになっていた。バッドバンクの損失は、株主、社債権者、保険対象外の預金者によって吸収されることになった(最も多額の資金を提供するのは保険対象外の預金者で、その額は44億ユーロ相当と推定されている)。

救済策の厳しい条件で銀行再編計画に狂い

 この分割は現実になっている。ライキの保険対象の預金を含む、グッドバンクの資産と負債はBoCに移管された。だが、バッドバンクが不良債権(借り手の返済が遅れている債権)を持ち続けるのではなく、損失予想額を差し引いたライキの国内債権がすべてBoCに移されている。そのためBoCは、これらの債権がさらに不良化した場合、損失に見舞われる恐れがある。一方、BoCは100億ユーロ相当の保険対象外の預金の大部分を自己資本に転換することによって自己資本を増強することになっている。修正後の救済策が公表された時点では、強制的な転換はこれらの預金の37.5%に影響を与えるだけではないかと期待された。ところが今、BoCの資本増強のために保険対象外の預金の60%が必要になりそうだ。これは、キプロスに課せられた厳しい措置が非常に大きなダメージを与えていることが原因だ。失敗に終わった救済案の前は、最悪のシナリオで、2大銀行が資本増強に78億ユーロを必要とすると予想されていた。流出した欧州委員会の資料によると、現在は、混乱を収拾するために106億ユーロが必要になる可能性があるという。BoCの大口預金の中には、地方自治体や公立学校の預金など保護されるものもあるが、それ以外の預金はそれほど幸運ではない。中央銀行は先日、保険会社、慈善団体、私立学校は27.5%の損失を被るだろうと述べた。BoCの資本増強の最終的な規模がどれくらいになるにせよ、再編後のBoCは多額の債務を背負った経済に大きく依存しているため、その信頼性は依然として疑わしい。キプロスでは、家計と企業の民間債務がGDPの300%近くに上り、欧州連合(EU)の中で3番目に高い水準となっている。現在14%の失業率が上昇し、不動産の価値が下落するにつれ、不良債権は急増する見込みだ。

4年でGDPが3割減少?

欧州委員会は救済前に、キプロスのGDPが2013年に3.5%、2014年に1.3%減少すると予想していた(図参照)。欧州委員会は4月初めまでに、この見通しを8.7%と3.9%の減少に修正していた。だが、キプロスのコンサルティング会社サピエンタ・エコノミクスのフィオナ・マレン氏によると、修正後の見通しでも楽観的すぎるかもしれないという。マレン氏は、今年はGDPが15%縮小すると考えており、2014年にさらに15%、2015年に5%減少すると予想している。マレン氏の予想は、2011年から4年間の累計でGDPが33%減少することを意味しており、ギリシャの6年間の予想減少率24%をも上回ることになる。このように悲観的な予測が現実になれば、キプロスを本当に破滅に追い込むのは、資本逃避よりもむしろ、聖書に書かれたような規模の労働者の大脱出かもしれない。

コメント

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No title

スペインとイタリーの国債利回りが大分下がった現象をみると、危機が起こってもある種の国は救われる。確かにキプロスはこれは経済的にはロシアで、政治的にはEUという中途半端な国だったので、こういう順当なシナリオになったけれど、スロベニアなどの債券はOKなのではないかと思う。

利回り7パーセントの債券というのは、このデフレの時代はたまらなく魅力的ではある。後、スロベニアはイタリアの隣だし、旧ユーゴをある意味まとめている国といえるので、ここは大丈夫なのではと思っている。

日本の住宅ローン金利の引き上げが開始されたのをみて、日本で一時期、借入ができていた時代に早期返済してしまったのは後悔している。あの時代50百万ぐらい目一杯借りて、ちょっと前に変動から10年ぐらいの固定金利にしていれば、ユーロ転しても為替差益だっただろうし、株を買っても十分なリターンが出ていた。日本のサラリーマンはその点、ある意味魅力的な職場だった。国外に出て、国外でサラリーをもらっても日本の銀行からは借りられない。

No title

aaさん

スロベニアは食糧自給国ですからね。規模も小さいので救済できるでしょう。

日本円で低金利資金調達というのは魅力ですね。

シンガポールの銀行も、低金利ですよ。一度検討されてはどうでしょう?日本の銀行より柔軟に対応してくれます。
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