真実は如何に?

 ・・・<『ジャパン・シフト』、p92~p94から抜粋開始>・・・

 あらかじめ決められていた「ユーロ崩壊」

 外交の世界とは実に不思議なものだ。一般に知られている以上に無数のつまらないルーティンがある一方で、「後から考えればあの時、歴史は変わった」といったタイミングに出くわすことがある。今から考えれば「あの時」もそうだったのかもしれない。
 1997年の秋のことだ。当時、私は駆け出しの外交官としてドイツ・ボンにあった日本国大使館に勤務していた。役職は儀典担当。ひと言でいえば特命全権大使のカバン持ちだ。
 当時仕えた有馬龍夫大使は省内屈指のハード・ワーカーであり、大量の書類さばきをこなしながら、夜ともなればほぼ毎日、ドイツ政財界の要人を呼んで会食をしていた。情報収集のためである。
 そんなある日。ボンの小高い丘の上にある大使公邸で開かれた夕食会に、コール首相(当時)の右腕として知られていたビッタリッヒ首相補佐官(外交安全保障担当、後の駐NATO大使)が招かれた。
 ビッタリッヒ首相補佐官というと当時のドイツ外務省では「泣く子も黙る」と言われていた強面(こわもて)の人物だ。凄腕でも知られていたが、その分、コール首相の信頼を一身に集めていたことでも知られていた。
 この宴席はとある重大事について日本側から頼みごとをするために行われたものだったのであるが、それについてここでは脇においておく。なぜなら、この時、ビッタリッヒ補佐官がこぼしたひと言の方が私たち日本側をむしろ大いに当惑させたからだ。
 「共通通貨ユーロは単年度の財政赤字が国内総生産(GDP)の3パーセントを越えない国だけが導入することができる。これがマーストリヒト基準です。では大使、なぜ3パーセントと決められたのか、御存じですか」
 首をかしげる日本側一同。もちろんこの点については実に詳しい説明をドイツ側から受けている。またブラッセルにいる欧州委員会から説明を受けたという公電ももちろん読んでいる。
 それなのになぜあらためてこんなことをビッタリッヒは聞くのか。その真意は何か。
 やや沈黙が続き、ビッタリッヒが大笑いしながらこう言った。
 「大使、実に簡単なことです。1パーセントでは低すぎますし、5パーセントでは高すぎます。だから3パーセントにしたのです」
 この後が大変だった。なぜなら、人類史上稀に見る共通通貨「ユーロ」というプロジェクトの肝とでもいうべきマーストリヒト基準が、そんないい加減な形で決められていたと言われたからだ。
 無論、他の人物からであったならば、日本側も無視できたに違いない。しかし相手はなにせコール首相の右腕、ビッタリッヒ補佐官である。「公電に記して東京の外務本省に報告するか否か」しばし侃々諤々(かんかんがくがく)の議論になったことを今でもはっきりと覚えている。
 だが、今となってはこのビッタリッヒからのメッセージは大きな意味があったことを私は知っている。なぜならば事ここに及んで、ビッタリッヒを始めとする当時の関係者たちが続々と「ユーロとはいかにいい加減なものであったのか」を暴露し始めたからである。


 ・・・<『ジャパン・シフト』、p98~p103から抜粋開始>・・・

 この人物(仮にR氏としておこう)は現在もなお金融マーケットに携わられる一方で、フィランソロフィー(社会奉仕活動)にも力を入れられている。決して目立つことはされない人物であるが、その世界では知らぬ者はいない人物である。
 人づてに知り合ったこのR氏は、聞くところによるとロスチャイルド系金融機関の中でもとりわけ重要な機関の幹部であったのだという。前章(第2章)で書いた世にいう「グローバル人財」としては大先輩というわけだが、世間でよく言われているような自己主張の激しい「グローバル人財」では決してない。紳士然とした白髪で常に笑顔を絶やさず、むしろ相手の話をきっちりと聞く姿勢を崩さない人物だ。
 R氏が言う。
 「私がね、原田さん、ロスチャイルド系の門をくぐったのはまったくの偶然なのですよ。しかも入る時にはテストがあった」
 国際金融資本の根幹に入るにはテストがある。根拠なき感情的な「陰謀論」ばかりが横行している我が国では普通にはまったく聞くことのできない話だ。思わず私は「えっ! テストがあるのですか」と大声を出してしまった。
 「テストといっても1問だけなのです。日本でいちばん裕福な人物の資産表を持ってこいというのですよ。色々と工夫して入手し、これを英訳して持っていきました」
 宿題の回答を持っていった先はスイスの古城であったのだという。大きな城の中は薄暗く、たくさんの扉があった。これらをいくつも開けた先には大きな机があり、1人の老人が椅子にかけて座っていた。
 それが……ロスチャイルド家の当主であった。あの国際金融資本の雄の頂点に立つ人物である。
 「彼はどんな表情をしていたと思いますか。大金持ちだからさぞ愉快な顔をしていたのではないかと思うでしょう? それがまったく違うのですよ。むしろ逆で、言ってみればこの世の苦しみのすべてを引き受けたかのような苦渋の表情をしていました。びっくりしました」

 R氏がややひるんだのを見ながら、当主は手を伸ばし、持ってきた宿題の回答を受け取った。1つ1つ、丹念にその上の数字を見ていく当主。ところが問題はそこから先だった。
 「もっとびっくりしたことがありました。折角、日本で入手して英訳までしたその一覧表の上に、赤鉛筆でサッ、サッと横線を引き始めているのですよ。しかも数字の上から。これは一体何だろうか、何事だろうかと心底驚きました」
 驚く日本人バンカーにようやく気付いた当主の翁は、ゆっくりと顔を上げ、こう言ったのだという。
 「ここに書いてあるのは、資産(asset)じゃない」
 R氏にとっては青天の霹靂であった。いや、そんなことはない。あれだけ一生懸命探した資料なのであるから。嘘が書いてあるはずもないし、数字に間違いもないはずだ。
 「いや、それは……」
 そう言いかけたR氏にかぶせるように当主はこう言った。
 「君、不動産は資産じゃないのだよ。なぜならば持って逃げることができないじゃないか」
 後から周囲に聞くとこういうことであったらしい。欧州の国際金融資本の中でもユダヤ系のロスチャイルド家にとって、持って逃げることができないものは資産ではない。なぜならばユダヤ人の歴史は「逃亡に次ぐ逃亡の歴史」だったからだ。
 したがって欧州系国際金融資本、特にロスチャイルド家にとって資産とは「貴金属・鉱物資源」と「通貨」だけなのだという。これに対して持って逃げることのできないものの典型である不動産は「資産」には入らないということになる。
 「欧州の国際金融資本、特にロスチャイルド家から見ると、今の金融メルトダウンは本来、金融資産ではない不動産を、証券化を通じて金融マーケットに無理やりつなげてしまったアメリカ人の大失敗ということなのですよ。欧州における伝統的な金融マーケットでは決してこんなことにはならなかった」
 R氏は笑いながらそう私に教えてくれた。確かに今の金融メルトダウンは、サブプライム証券というかなり無理やりな金融商品をアメリカ人たちが考えついたからこそ始まったのだ。
 「なるほど!」と私が膝を叩いていると、R氏はこうも教えてくれた。
 「ところで原田さん、ユーロって何でユーロと言うのか知っていますか?」
 面と向かってそう尋ねられて、正直やや戸惑った。ユーロはEURO、ヨーロッパだからユーロなのだろうといったくらいにしか考えていなかった私は素直に降参した。プロには素直に尋ねるに限る。
 「あれはですね、石油ショックの時に産油国が稼いだ大量のマネーを欧州に預けた。これをユーロ・ダラーと言っていたわけですが、これを担保にして発行された通貨だからユーロって言うのですよ」
 前節で述べたビッタリッヒ元ドイツ首相補佐官の話もそうであったが、「本物たち」の発想はやはり違うのである。そしてその奇抜な発想によって本当の歴史は織り成され、その上で普通に広められるストーリーが創られる。この手の話を当事者であった人物から聞く度にワクワクする。
 「実はこの点がこれからの世界を考えるにあたってとても大切な意味合いを持っているのです。なぜならば中東の産油国がそのあり余るマネーを一体どこに預けたのか。それがこれから世界で起きることの本当の焦点なのですから」
 本当のバンカーはこういうものなのかとつくづく思った。無論、細かなカネの計算もできるのだろうが、どこかしらその考え方には奥深い歴史観がある。聞いている方は知的好奇心からぐいぐいその話に引っ張られていく。

コメント

非公開コメント

No title

ユーロの成り立ちがいい加減なバーで認められているからといってユーロ崩壊するかといえばそうではないと思う。日本の傾向としていろいろごちゃごちゃ指標をつくって納得しようとするけれど(例えば羽田枠の配分)、もともと落ち着きどころは恣意的に決められている。欧州ももともと統合ありきでつくられている。ただ、歴史は繰り返す。ハプスブルグ、ブルボン、ナポレオンなどいろいろな統一がなされたが、それらは歴史の一定期間を安定させるもの。だからユーロが崩壊してもそれはおかしなことでもなんでもない。

欧州で不動産を買うと理解できるのは不動産のうち土地はそんなに高くないということ。土地に対しての日本的信仰心がない。また、建物も中古と新しいものでさほど変わらない。日本が不動産が高止まりするのは、国民の信仰心はまだあるし、日本国外に住んでも利便性が変わらないということに気づいていないということだろう。後、欧州では不動産の売買は非常に重税だ。VATと土地譲渡税がそれぞれかかるし、Notaryにも払わないといけない。設計コストも別。

90万ユーロの内訳として土地25万ユーロ、建物55万ユーロ、内部造作10万ユーロとすると、設計2万、Notary2万ユーロ、VAT11万ユーロ、土地譲渡2万ユーロ、17万ユーロが付随コスト。

No title

その割合は国によって違いますが、色々と割高で面倒ですよね。ドイツで持ち家率が少ないのはそのためです。税金が高いし。
プロフィール

禅師

Author:禅師
投資顧問 

今年は先行投資、出費のみ

実績:

2016年 先行投資50万円
2015年 先行投資300万円
2014年 先行投資300万円
2013年 先行投資250万円

住所:東欧(?まで)
好物:海老チャーハン
コロンビア珈琲
趣味:旅行
音楽鑑賞
美術鑑賞 
サッカー
ラグビー
キックボクシング

最新記事
最新コメント
カテゴリ
FC2カウンター
ブロとも一覧

土俗呪術随想録

海外の妖しい Blog 記事から

まほろばの蒼き惑星・・・宇宙の詩。 Psychic Medium
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Powered by FC2 Blog

FC2Ad

Copyright © 禅師 修行日記 All Rights Reserved.