2012年8月13日付 英フィナンシャル・タイムズ紙



フランスの製薬大手サノフィは第2四半期(2012年4~6月期)、西欧諸国の緊縮財政と2つのブロックバスター(大型薬)の特許切れにより厳しい状況に直面していた。しかし、ユーロが米ドルなどの主要通貨に対して「非常に大きな動き」(同社経営陣)を見せたことから、同四半期の売上高は6.2%も増加し、純利益は19億ユーロと、9.6%の減益にとどまった。為替変動を除くベースでは、売上高の伸び率は0.4%に過ぎず、純利益も17.7%減だった。
「これが通常の為替変動なのか、それともユーロの対ドル相場の構造的かつより長期的な変動なのかについては、しばらく時間が経ってみないと分からない」。サノフィの最高経営責任者(CEO)、クリストファー・ヴィーバッハー氏はこう語る。これはサノフィだけの話ではない。ユーロ安は、欧州大陸の大手企業の一部で売上高と利益を押し上げている。危機に見舞われた欧州周縁国での需要減少による影響を緩和するのに貢献している格好だ。

ユーロ圏外への輸出が多い多国籍企業に追い風

この効果は今のところ、為替ヘッジによってやや減殺されているものの、最も大きな利益を得るのはサノフィのように、コストの大部分は欧州で発生するがユーロ圏外での売り上げの割合が高い多国籍企業になりそうだ。サノフィの場合、ユーロ建ての売上高は全体の4分の1程度にすぎない。サノフィの最高財務責任者(CFO)のジェローム・コンタミーヌ氏は、「もし今のような状況が続けば、売上高と利益には向こう数四半期にかけて好ましい影響が及ぶだろう」と見ている。 製薬会社に加え、ドイツの高級車メーカー、欧州の化学会社や航空機メーカー、高級ブランド品メーカーなどもユーロ安から利益を得ている。これとは対照的に、ユーロ圏内への輸出依存度が高い傾向にある南欧の企業は、観光業が上向くという見通しを別にすれば、ユーロ安による利益をそれほど手に入れていない。「ユーロの下落は、一部の企業が景気の減速で被る悪影響を一部相殺するのに寄与する可能性がある」。格付け会社ムーディーズのクレジット・ポリシー・チームのシニアバイスプレジデント、ジャン・ミシェル・カラヨン氏はこう指摘する。「ただ全体的には、景気の減速を背景に、欧州企業の業績は引き続き悪化傾向をたどるだろう」ユーロ圏の企業が利益を得るということは、裏を返せば米国の多国籍企業が困難に直面するということだ。米国企業の多くは既に、第2四半期にはドル高という逆風が吹いたとこぼしている。ユーロはドルに対し、6月末までの3カ月間で5%以上下落した。2011年6月の水準に比べれば13%近く下げている。ユーロは日本円や中国人民元に対しても、この1年間で14%下落している。ユーロ相場は現在も大きく変動しているが、対ドルでは6月末以降もさらに安くなっている。

一段と強くなるドイツ自動車メーカー

BMWは、ユーロ安により2012年の利益が数億ユーロ(1ケタ台の半ばから後半)押し上げられると話している。ダイムラーは2012年通期の外国為替関連利益を約6億~7億ユーロと見込んでいる。販売台数で欧州最大の自動車メーカーであるフォルクスワーゲン(VW)も、ヘッジを考慮した後の為替要因が今年上半期の営業利益を5億ユーロ押し上げたと述べている。これとは対照的に、PSAプジョーシトロエンや、米ゼネラル・モーターズ(GM)傘下のオペルといった欧州の大衆車メーカーは、欧州での販売に依存しているため赤字を続けている。「ユーロ安は、欧州の経済回復を支援するのに必要な多くの要素の1つであるように思われる。しかし短期的には、既に他社を上回る業績を上げているドイツの自動車メーカーがさらに強くなるのに貢献するだけだろう」。クレディスイスのアルント・エリングホルスト氏は顧客にそのような見解を示した。同氏の推計によれば、ドイツの自動車メーカーが享受する為替関連の利益は今年が16億ユーロで、2013年には38億ユーロに達する見通しだという。ユーロ安が売上高の伸び悩みを覆い隠すのに貢献している企業もある。ドイツのエンジニアリング企業シーメンスは2012年度第3四半期(4~6月期)に前年同期比10%増となる195億ユーロの売上高を計上したが、この増収の半分は為替レートの変動によるものだった。「レイバン」や「オークリー」ブランドのサングラスを製造するイタリアのメガネメーカー、ルクソティカは、第2四半期の売上高が15%増となったが、増加分の半分以上が為替変動によるものだった。「今年の後半についても、ドルが引き続き当社の支援材料になる」と同社CFOのエンリコ・カヴァトルタ氏は言う。しかし、すべての欧州企業がユーロ安を追い風にできたわけではない。英国と米国で投資銀行業務を大々的に展開するドイツ銀行は、ユーロ安のために第2四半期の費用が増えたと述べている。また、スイスの資本財メーカーABBは決算をドル建てで公表しており、売上高を約6億ドル、EBITDA(支払利息前・税金前・減価償却費前の利益)を約1億ドルそれぞれ減らしている。多くの欧州企業は昨年、比較的強いユーロによる向かい風を経験しており、今年は各社が行った為替ヘッジが利益を短期的に押し下げる形になっている。ムーディーズのカラヨン氏は「大手の製造業は2~3四半期分の為替ヘッジを行うことが多い。そのため、ユーロ圏の企業がユーロ安から大きな利益を得るには、ユーロ安がしばらく続く必要があるかもしれない」と指摘する。

ユーロ安が続けばエアバスに多大な利益

 エアバスの親会社である独仏系企業EADSが製造する旅客機はドル建てで販売されるのが普通だが、その製造拠点のほとんどはまだ欧州に置かれている。同社には為替ヘッジの契約がまだ残っているため、ユーロ安がもたらす短期的な利益は限定的だ。ヘッジの平均レートは1ユーロ=約1.35ドルであり、現在の相場の約1.24ドルよりもユーロ高になっている。同社は実需筋では最大級の為替ヘッジ利用者であり、そのポートフォリオの規模は841億ドルに上っている。UBSのアナリストらは、ユーロ安があと数年続くと予想するなら、これらのヘッジが解消されるにつれて、長期的に「エアバスの利益の可能性は大きく変化する」と述べている。UBSの推計によれば、ユーロが対ドルで1セント安くなるごとに、EADSには同社の株価を1ユーロ押し上げる効果が及ぶ公算があるという。

為替ヘッジのパターンに変化

 今後については、コメルツ銀行が行った調査によれば、ドイツ企業は7月時点でユーロについて以前よりも楽観的な見通しを示していた。この調査が行われたのは、もしユーロ圏の救済基金からの支援を政治家が要請するなら、欧州中央銀行(ECB)には債券市場を買い支える用意があるとECBが表明した後のことだった。企業は今年に入ってから、ユーロ圏危機のためユーロについてはかなり弱気だったが、その流れは7月に劇的に変わったと、コメルツ銀行の外国為替セールス部門代表、ジェラルド・ダンハウザー氏は言う。コメルツ銀行とシティグループの企業向けセールスデスクの話によれば、そのせいで為替ヘッジのパターンが変化しており、欧州の輸出業者はここ数週間ヘッジを増やしている。投資銀行のリポートによれば、輸出業者は今年に入ってからしばらくの間、ユーロの下落に対するヘッジをほとんど講じていなかったという。

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